2004.11.26

かかりつけ医

ところで、このへんの一連の病気話を読んでいると、どうもうちのかかりつけ医が頼りないのではないか、という印象を与えているような気がする。
まあ、頼りがいがあると言えば微妙に嘘になるかもしれない。そもそも小さな子どもを小児科ではなく内科にかからせている時点で、頼りがいを求めてはいけないのである。

数ある医療の標榜科のうち、最も子ども(15歳以下)を診ない科はどこか。
正解は、内科である。
意外かもしれないが、その他の科は基本的に年齢によって科が分かれていることはない。目の病気なら眼科、鼻や耳なら耳鼻科、皮膚病なら皮膚科。以下同文。
産婦人科はどう?という疑問もあるだろうが、女性の生殖器関連の病気なら婦人科なので、形態異常や染色体異常などの先天的な疾患や、生殖器の腫瘍など、15歳以下でも婦人科にかかる場合はいろいろあるのだ。
外科の場合は、大学病院などの大きなところだと小児外科が分かれているところもあるが、一般的な病院では一般外科に含まれている。

では、内科はなぜ基本的に15歳以下を診ないか。それは、定義による。
内科的な疾患のうち、16歳以上を診るのが内科。15歳以下を診るのが小児科、と分けられているのだ。だから、同じ疾患でも、年齢によって科がかわる。逆に言えば、子どもの時から喘息で小児科に通っていても、そのまま治療を続けて16歳になると、内科に転科することになる。
これは必ずしも厳密に杓子定規に分けられているわけではないので、小児を中心に診ている診療所で、定期検査程度なら大人になってもフォローしているケースもあるし、検査の関係で小児が内科を受診するケースもある。

そんなわけで、いわば、子どもについて最も知識がないのは、実は内科医である。少なくとも、病院勤務の内科医は、日常的に小児を診察することがない。
だから、子どもをかからせるには、やはり内科より小児科のほうが断然よい。
元内科医の私が言うから本当だ。

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2004.09.15

個人情報、車上狙いにご注意を!

個人情報漏洩のニュースが後を絶たない。
ヤフーのような意図的な持ち出しはもうどうにもならないが、過失での流出がけっこう多く、その中でもちょくちょく見かけるのが、盗難による流出。具体的には、個人情報を記録したパソコンが盗まれたり、名簿そのものが盗まれたり、というようなアナログでプリミティブな漏洩だ。今時、ハッキングで侵入されて名簿が持って行かれたりするのが主流かと思えば、そういうわけでもないようだ。

この手の個人情報漏洩は昔からある。本来ならば職場の外に持ち出してはいけないはずのものが、いろいろな都合で(多くは規約違反だが)外へ持ち出されているうちに、思いもかけず盗難に遭う、という具合。
時にみかけるのが、教師がつけかけの通信簿やテストの答案を持ち出していて、買い物やパチンコなどで駐車場に車を停めているすきに、車上狙いにあって、金目のものと勘違いされて、これらの入ったバッグを盗まれる、というもの。本来は通信簿やテストの答案は校外持ち出し禁止されているはずだが、現実には、どうしても持ち帰り仕事をしないと間に合わない、というケースが多々ある。残って校内でやればいいじゃん、というのはもちろん正論だが、現実はいろいろだということで。

車上狙いは非常にこういう場合、危険なもので、だいたい自宅に泥棒が入っても、現金や通帳、貴金属など、他の金目のものを持って行かれるだけで済むが、車上狙いの場合、とにかく短時間でことを済ませるため、ぱっと目に入ったかばんをそのまま中身も見ずに持っていく。大きなかばんは狙われやすい。だから、答案だのなんだの入ったかばんは、金目のものが入ってないからいいか、と車の中に置きっぱなしにすると、車上狙いにあっという間に狙われるはめになる。
昔は中古市場が小さかったためあまり狙われなかったパソコンも、最近は換金しやすくなったため、けっこう狙われるようだ。ちょっと立派なケースに入れてあると、アタッシェケースと勘違いされ、パソコンに詳しくない車上狙いにも持って行かれてしまうこともあるだろう。
なんにしろ、パソコンだの大きなかばんだのは、それだけで車上狙いにつけ狙われる原因になるから、外から見える場所に置いておいてはいけないというのが大原則。

というようなことを思うようになったのは、私にも実体験があるからである。幸いにも、自分自身が被害に遭ったわけではなかったが。

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2004.05.30

女性医師、手術中にC型肝炎感染 母子感染も

個人的に気になるニュースがあった。
NIKKEI.NETより。

医師、手術中にC型肝炎感染――2002年、大阪の病院で

 大阪府内の病院で2002年、手術の助手を務めた20代の女性外科医がC型肝炎ウイルス(HCV)に感染していたことが29日、分かった。感染患者の血液が目の粘膜に付着したためとみられ、外科医が翌年出産した赤ちゃんへの母子感染も確認された。
NIKKEI.NETの記事中には書かれていないが、日本経済新聞の記事によると、この手術はHCV(C型肝炎ウイルス)陽性の乳ガン患者の手術中であったとのことだ。そして、女性外科医は抗ウイルス剤を服用し、現在はウイルス陰性となっているとのことだが、赤ちゃんのほうはまだ小さいため、特になにも処置をしていないということだ。

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2004.05.04

病理解剖を申し出ること

さきに書いたエントリー「病理解剖のすすめ」にトラックバックいただいた救急隊員の独り言「死亡確認の後の一言」を読ませていただいたところ、N.styleでいこうのきょんさんが、ご自身の聞かれた病理解剖の話についてコメントされていて、また自身のblogで「医療のために?」で関連して記事を書かれていました。
同僚の義父が亡くなった時、病院側から病理解剖をさせてほしいという申し出があったという話。

「……死に方が医者の予測を超えてるってねぇ……解剖させてくれって言われてるのよ」

……予測を超えてたって――そんなのは生きてる人間相手なんだから、なんでもかんでもデータ通りに行くわけあるまいに。

確かに医療の進歩には必要なことかも知れないけど、家族を亡くしたばかりの人達に言う内容かと唖然としましたね。

解剖の知識のない一般の人なら、こう思って当然でしょう。
例えば、「ついさっきまで生きていたのに、息が止まったと思ったら、もう平気で切り刻めるの? しかも切り刻まれる側には何の良いこともないのに、他人様のために切られてくれって? 調べたいなんて医者の都合でしょ。こちらは調べてもらっても生き返るわけじゃない。家族を亡くしてすぐなんて、まだ死んだことも信じられないのに、いきなり死体扱い。ゆっくりそばで別れを惜しむ時間もくれないなんて、人でなしだね!」という具合に。

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2004.05.03

病理解剖のすすめ

親族の急逝があったことで、あらためて感じたことがありました。
それは、病理解剖、についてです。。

このエントリーでは、「続きを読む」以下、解剖について書かせていただきます。
ごく普通の言葉の表現しか使いませんが、人によってはそれでもグロテスクに感じたりするかもしれません。その点はご了承ください。特にこういった話が苦手な方は、「続きを読む」以下をご覧になるのは十分にご注意ください。

−−−−−−−(以下、本文に入ります)−−−−−−−

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2004.04.10

ニアミス

昨日のキサラの3ヶ月健診で、いずれはありうるなぁ、と思っていたことが起こった。
それはニアミス。

この市では、以前私が勤務していた病院で同時期に働いていた小児科医の先生が開業している。私がまさに右も左も分からない卒業したての研修医1年生で赴任したとき、その先生は小児科の部長であった。

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2004.03.15

ある肝硬変患者の場合

消化器内科の仕事をやっていると、普段の自分の生活ではそうそう出会わないけれど、仕事の上では非常によく出会う、一群の人々がいる。
それは、大酒飲み。それから、アルコール依存症。
これらの人々は、その大半が消化器系の病気を抱える。具体的には、軽いうちは血液検査でやっとわかる程度の肝障害。重くなってくると、アルコール性脂肪肝、そして肝硬変となる。慢性膵炎のような膵臓の病気を持つ人もいる。
これらの病気は、アルコールさえやめればよくなったり、進行が止まったりする。だから、有効な治療としては、断酒ということになる。しかし、なかなかやめられる人はいない。簡単に断酒できる人は、そもそも依存症ではない。単にお酒が好きなだけだ。まあ、中にはそういう人もいるから、断酒できる人ももちろんいるのだが、大部分はやめられない。やめられないから、外来にはずっと通ってくるが、そのままではあまりよくなるケースはない。
アルコール依存症となると、立派な精神科領域の疾患なので、本人の意思だけではまずやめられない。精神科に通ってカウンセリングを受けたり、お酒に弱くなる薬を処方してもらったり、患者同士の「断酒会」に入って互いに支え合ったりしながら断酒を目指す。しかし、本人が医者にかかって治療する意志がなければ、それも不可能である。
だいたい、肝臓は「沈黙の臓器」というくらいで、通常は相当機能が悪くならないと自覚症状が出ない。出ても「なんとなくだるい」とか「顔色が悪い」とか「なんか白目が黄色い」とか程度では依存しているアルコールをやめるきっかけにはなりにくいので、結局、かなりの重症にならないと治療を開始しない場合が多い。例えば、血を吐いたとか、腹に水がたまって苦しいとか、食事が全然とれなくなったとか。こういった症状だと、まず消化器内科にやってくる。そんな状況で入院した場合、アルコール依存症治療をしている精神科への受診をすすめるが、実際に受診して断酒を試みる人は半分くらいかな、という感じだった。医療側からの説得だけではなかなかやる気になってくれず、家族などの働きかけが重要になるのだが、こういった人たちは家族から見放されていたり、家族がいなかったりすることが多いのだ。本人も人生に対して自暴自棄になっていたりするから、なおさら難しい。

だが、こんなことが、以前あった。

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2004.02.20

甲状腺機能低下症

長女ミツキの医者嫌いには理由がある。
彼女は持病で大学病院に定期通院していると以前の記事で書いたことがある。その持病は、先天性甲状腺機能低下症という。

ヒトの首の前面には、気管に張り付くように甲状腺という臓器がある。ここで甲状腺ホルモンというホルモンが作られている。体の基礎代謝を司るホルモンで、多すぎても少なすぎてもいけない。
大人の場合、多すぎると、甲状腺機能亢進症という病気になる。その中で多いのはバセドウ病だ。痩せ、動悸(頻拍)、眼球突出が典型的な症状だが、そこまで症状が出揃わない場合のが多い。急に痩せてきた、静かにしていても心臓がドキドキして早く打つ、やたらに汗かきになった、などがあれば、この病気の可能性がある。
一方、少なすぎると、甲状腺機能低下症という。これもホルモン減少の原因によっていくつかの病名がある。比較的多いのは橋本病。こちらは亢進症とは逆に、体重増加、むくみ、徐脈(心拍が少ない)などの症状が出てくる。
亢進症でも低下症でも、ずっと放っておけば、心臓に負担がかかり、心不全となり、死ぬ可能性もある。しかし、進行は慢性で遅いため、そうなる前に見つかるのが大部分で、診断がついてしまえば、治療でき、直接的な生命の危険もない。ただ、慢性の病気なので、薬を飲み続けるなどの長期の治療が必要になる。
ここまでが、当時私が持っていた甲状腺機能低下症の知識である。

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2004.01.29

娘、災難に遭う

子供は、大人よりもささいなことで脱臼、あるいは亜脱臼することがしばしばある。子供の関節は大人よりゆるいためだ。
代表的なのは肘内障というものだ。急に手を強く引っ張ることで起こることが多い。突然肘付近を痛がって、腕をだらんと垂らし、動かさなくなる。これは亜脱臼なので、はめるのは意外に簡単、素人でもできる。事実、私はその昔、救急外来で、初めて診療した肘内障の子の整復にひとりで成功した。(もちろん、実際には、病院では骨折や他のけがなどの有無を確認してから行うので、素人判断で他人のお子さんの肘をはめるのはちょっとまずいでしょうが。)
だから、手を急に強く引っ張ったりするのはしてはいけない、ということは知っているが、知っていても、子供は思いがけないところでケガをするもので。

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2004.01.27

個人情報のセキュリティってないね(その3)

「個人情報のセキュリティってないね(その2)」の続きである。

病院における職員、というよりも医師の個人情報は、意外に簡単に知れるものらしい。
勤務していた当時、入院などで診た患者さんから、自宅宛てにお礼の類が届いたことが数回ある。数回は、それぞれ違う患者さんからだ。いったいどこで、住所や電話番号を知ったのだろう。
まあ、それでも、患者さんなら、病院でもだいたい担当医師とどんな状況であったかわかっていることもあり、「年賀状を送りたい」などと言われれば教えてしまう可能性もある。まるっきり関係がない人というわけでもないから、微妙なところだ。もちろん、本来はそういう場合は個人情報は教えず「病院宛にお願いします」というのが筋だろうけれど。

だが、実は、全然関係ない人間でも、医師の電話番号くらいなら、案外簡単に入手してしまえる場合がしばしばあるのだ。

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